ブルーゾーン石垣シンポジウム|ゆんたくが育む、心の健康。沖縄文化に息づく“つながり”の力

このセッションで語られたのは、沖縄や八重山地域に根付いてきた暮らしの文化と、健康との深いつながり。
これまで医学や栄養の視点から語られてきた「健康」を、今回は“人との関係性”や“日々の暮らし”という角度から、やさしく見つめ直す時間となりました。

沖縄の暮らしを語るうえで欠かせないのが、「ゆんたく」と呼ばれる会話の文化です。
特別な用事がなくても、近所の人がふらりと集まり、他愛のない話を交わす。
そんな何気ないやり取りが、孤立を防ぎ、心に安心感をもたらしてきました。

また、冠婚葬祭や地域行事、共同作業などを通して、世代を超えた関係性が自然と育まれてきた点も、沖縄ならではの特徴です。
年齢や立場を越えて顔を合わせる機会があることで、高齢者も子どもも、地域の一員として役割を持ち続けてきました。

八重山地域に残る共同売店や、水場を中心とした暮らしの仕組みも紹介されました。
買い物や水汲みといった日常の行為そのものが、人と人が出会うきっかけになる。
「交流しよう」と意識しなくても、暮らしの中に自然と出会いが組み込まれていた環境こそが、地域の健康を支えていたのです。

一方で、現代の石垣島や沖縄では、そうした風景が少しずつ変わりつつあります。
車社会の進行により歩く機会が減り、近所同士で顔を合わせる時間も少なくなりました。
核家族化や単身世帯の増加によって、暮らしの形も大きく変化しています。

便利で効率的な生活が広がる一方で、人と人との距離が、気づかぬうちに広がっている——。
その変化は、寂しさだけでなく、心身の健康にも影響を与える可能性があると指摘されました。
孤立感や交流の減少は、心の不調や生活習慣の乱れとも深く結びついているのです。

そこで本セッションでは、昔の文化をそのまま戻すのではなく、「今の暮らしに合った形で再構築する」ことの大切さが語られました。
地域イベントやワークショップ、体験型の取り組みなど、人が自然と集まり、顔を合わせられる“場”をつくる。
大切なのは、「交流しよう」と声をかけることよりも、自然と関わりが生まれる環境づくりです。 この時間を通して参加者が実感したのは、健康とは体の状態だけでなく、
「どんな人と、どんな関係性の中で暮らしているか」に大きく左右されるということ。
沖縄や八重山の文化に息づく“つながり”の力は、今も、そしてこれからの時代にも、地域の健康を支える大切な財産である——。
そんな想いが、静かに共有されたセッションとなりました。